フリーアドレスとは?意味、生まれた背景、メリット、デメリット、解決法

フレスペ

【フリーアドレスに関する基本知識はこれだけでOK】 

■フリーアドレスという言葉が意味するオフィスのスタイルとは

フリーアドレスとは和製英語ですが、Free(自由な)Address(所在)と読んで字のごとく、社員がオフィス内で自由に席を選択できるスタイルの事です。

従来は、出社時はもちろん、休憩や外出から戻った時も自分の席に座るのが当たり前のことでした。それに対しフリーアドレス化したオフィスでは、これら全てのタイミングで席を変えることが可能であり、特にきっかけがなくても気分で席を変えることに問題はありません。

ノートPCと無線LAN環境、スマートフォンを社員が所持していて、モバイルワークが可能な場合であれば実現できるので、現在の日本であればフリーアドレス化の敷居は低いと言えます。

■フリーアドレスで働こう、という発想が生まれた背景

座席を共有するという取り組みはアメリカの企業で始まったものですが、フリーアドレスという言葉の起源は日本です。

1987年に清水建設の技術研究所でテスト的に取り組みが始まりとされています。

90年代にオフィスを本格的にフリーアドレス化した企業のオフィスが日経ニューオフィス賞の一つを受賞したことにより注目を集め、時流の波に乗って浸透してきました。

そもそもフリーアドレスという考え方が生まれた原点は、スペースコストを削減したいという発想でした。

日中は不在にしている社員の席に、日中にデスクワークをする社員を座らせれば、デスクの面積を増やすよりもコストの削減になる、という着眼点です。 しかし、その当時は書類の電子化やモバイル化などの技術が未成熟だったこともあり、大きなデスクトップPCや大量の紙文書、固定電話がデスク上を占有し、誰もが気軽に座り変えるということはできない状況でした。

現在はそういった問題が、ノートPCやスマートフォン、タブレット端末の普及、紙媒体の電子化等により改善され、フリーアドレス化の障壁は低くなってきています。

実際にフリーアドレス導入企業は増加傾向であり、世界最大の事業用不動産サービスおよび投資顧問会社であるCBREの調査で、2018年時点50%超であり、3年前の2015年と比べると約1.6倍になっています。

【フリーアドレスの環境で働く、オフィスへの導入を検討するならばおさえたい知識】

■フリーアドレスを導入して得ることのできるメリット何か


①部署の垣根をこえたコミュニケーション機会が創出できる

②共同作業のしやすさと目的に適した席の選択で、業務効率が向上する

③全員のデスクが必要ではないので、社内のスペースを有効活用できる

④私物や固定機器がないため、オフィス環境美化に繋がる

⑤席を変えて気分転換ができるので、社員の生産性が上がる


①部署の垣根をこえたコミュニケーション機会が創出できる

フリーアドレスのオフィスでは他部署の社員、つまり視点やスキルセットの異なる社員とコミュニケーションをとることができます。

それにより、今までにはなかった新しい発想が生まれやすくなり、斬新な企画が発案できたり、課題の画期的な解決方法を見つけることに繋がる場合があります。 また、同部署の社員どうしであっても、席が離れていて普段は話さないという状況よりも、近い席に座った時にコミュニケーションをとることで、情報交換やノウハウの共有がなされて、相互のレベルアップが期待できます。

②共同作業のしやすさと目的に適した席の選択で、業務効率が向上する

同じプロジェクトで動いている社員や、用事のある社員の隣にノートPC一つを持って移動して、いつでも短時間のブレストを始めることができます。 事業用不動産サービスのCBRE日本法人が行った「オフィス利用に関するテナント意識調査2018」によれば、オフィスのフリーアドレス化の理由として、生産性や働き方に関わる項目が84%であり、業務効率アップを主目的としていたことがわかります。

ソファ席でゆったりと資料を読みたい、個室で集中的に作業したい、丸テーブルで他の社員と活発に議論したい、そういった時に自由な席選択をするのがフリーアドレスです。

③全員のデスクが必要ではないので、社内のスペースを有効活用できる

社員の在席率が低いほど、少ない面積のオフィスで必要なだけのデスクを用意し、その時々に社内にいる社員でスペースを共有することが可能になります。

営業職が多く、昼間はオフィスに空席が目立っている、常時デスクが必要ではない派遣社員やアルバイトが多く働いているオフィスでは、フリーアドレスのスペース活用が大きい効果を発揮します。フリーアドレスの起源的な発想であり、実利的であると言えます。

④私物や固定機器がないため、オフィスの環境美化に繋がる

フリーアドレスでは、席を移るときやオフィスを出るときに自分の所有物は全て片づけて、ロッカーにしまうか持ち帰ることがルールです。

紙の資料が積んだままにしたり、自分の私物を放置したまますることは出来ません。社員全員が整理整頓を半強制的に行う環境が作られるため、必然的にオフィス環境が美化されます。

また、ノートPCを開いたままにしていたり、重要書類を出したままにしたりといったリスクも軽減することができるので、セキュリティ対策的にも美しいオフィスになります。

⑤席を変えて気分転換ができるので、社員の生産性が上がる

営業職をはじめ移動が多い職種の社員は、合間合間で気分転換ができますが、社内で一日を過ごす社員は、一日中同じ席、同じ風景の中で業務にあたっていると、知らず知らずのうちにストレスが溜まっていることがあります。それが毎日続くと慢性的に集中力を欠く事態に発展してしまいます。

また、自分の意思で席を変えることができれば気分転換になるに加え、仕事内容応じて適した席を選ぶという主体性が生まれて仕事をコントロールする感覚が社員に身につく効果も期待できます。

■フリーアドレスを導入すると生じる可能性があるデメリットは何か


①社員の性格によっては、周囲の影響を受けて集中力が低下する

②社員各々が行っている作業の進行度を互いに把握しにくくなる

③同部署の社員どうしでの会話が減り、チームとしての結束力が弱まる

④同じ場所に同じ社員と座ることが常態化し、フリーアドレスの意味がなくなる

⑤特定業種や職種特有の業務に、フリーアドレスが不向きな場合がある


①社員の性格によっては、周囲の影響を受けて集中力が低下する

コワーキングスペースや喫茶店で作業することと同じように、周囲には自分の業務と直接は関係のない人がいて、多くの会話が繰り広げられるため、自分の作業に集中が難しくなる社員もでてきてしまう恐れがあります。 また、「一人ぼっちで仕事をしている気がして寂しい」と孤独を感じる社員も一定数存在する場合があります。出社したら確実に自分の場所があり、いつも通りの風景が見えることが安心に繋がっている社員がいるかもしれない事を忘れてはいけません。

②社員各々が行っている作業の進行度を互いに把握しにくくなる

「自分と同じ作業にあたっている他の社員はどれ程のスピードで進んでいるだろうか」、「部下は割り振った仕事をどこまで進めているだろうか」そのような不安が出てきた時に、こまめに自分のいるところに呼んだり呼ばれたりしていては、同じところでデスクを並べていた方が早い、となりかねません。

また、新人社員がいる場合は周囲の社員が協力して業務のフォローをする必要な場合もありますし、新人社員からしたら部署の社員全体の流れがつかみにくいと感じる場面もあるはずです。

③同部署の社員どうしでの会話が減り、チームとしての結束力が弱まる

別々の場所で業務をすることになるフリーアドレスでは、全員が一堂に会している状態よりも部署の一体感は感じにくくなります。隣の同僚が業務に励んでいる様子を見て意欲を喚起されたり、良い働きをした社員を部署内で褒めたりといったシーンは少なくなる恐れがあります。社員のモチベーションへの影響には配慮が必要です。

④同じ場所に同じ社員と座ることが常態化し、フリーアドレスの意味がなくなる

好きなところに座ってよいと聞くと、社員は自ずと自分の好きな場所に向かい、その場所が固定のポジションになってしまったり、同じ部署の社員どうしが意図せず密集してしまうことがあります。

すると、固定席を設けている状態とほぼ変わりない状態になってしまい、フリーアドレスのメリットがなくなってしまいます。 それどころか、仲の良い社員が固まってしまうと雑談が増え、業務に支障をきたすことも考えられるため、注意すべき問題です。

⑤特定業種や職種特有の業務に、フリーアドレスが不向きな場合がある

フリーアドレスのメリットやデメリットを理解する以前の話として、業務の性質上どうしても不向きであるケースもあります。例えば、固定電話を受ける事務職は受話器のある場所から動くことは難しいですし、大きなデスクトップPCやモニターを複数置いて業務にあたるクリエイターやデザイナーは、自分のデスク周りを出社の度に整えるのは現実的ではありません。

また、複数人で協力して物理的な作業する職場や、紙媒体を多く使わざるを得ない職場の環境も、同じ人が同じ場所に居続け、物は動かさないことが業務効率化に繋がるため、フリーアドレスは不向きと言えます。

パソコンと携帯等、必要最低限のデスク周りで基本的には個人作業という場合が、フリーアドレスに向いています。そのため、CBRE(世界最大の事業用不動産サービスおよび投資顧問会社)の発表ではIT業が最もオフィスのフリーアドレス化が進んでいるとされています。

■デメリット別に考えられる解決方法を考える


①解決法:社員の性格によっては、周囲の影響を受けて集中力が低下する

②解決法:社員各々が行っている作業の進行度を互いに把握しにくくなる

③解決法:同部署の社員どうしでの会話が減り、チームとしての結束力が弱まる

④解決法:同じ場所に同じ社員と座ることが常態化し、フリーアドレスの意味がなくなる

⑤解決法:特定業種や職種特有の業務に、フリーアドレスが不向きな場合がある


①解決法:社員の性格によっては、周囲の影響を受けて集中力が低下する

オフィスの全て、あるいはほとんどが共有スペースであることが理由で発生する問題です。

話し声が聞こえない静かなスペース、周囲から自分が見えないプライベートのスペース等を一定数用意することが解決に繋がります。

「いきなり個室を作るなんて難しすぎる、、」と感じる方も多いかもしれませんが、簡易的なパーテーションをつけたり、この会議室では一切の会話を禁止、というように部屋ごとにルールを決める方法もあります。

固定席のない孤独感の解消については、「自分はこの会社でこの仕事をしている」という実感を社員に持ってもらうことが解決法です。固定席がない分、自分の名前や部署、与えられているミッションを実感できる代替物の何かが存在していることが重要です。

ある会社では、個人ロッカーにプロの写真家が撮影した笑顔の写真を貼ったり、今期の目標を記しておくことで孤独感の解決を図っている企業がありました。工夫は様々ですが、そういったものがあればフリーアドレスのオフィスであっても、ここは自分の所属する会社だと感じることができるでしょう。

②解決法:社員各々が行っている作業の進行度を互いに把握しにくくなる

そもそも、工事現場で現場管理をするように目を光らせて作業を見守る必要はあるのでしょうか。

事故に発展する危険性がある作業や、リアルタイムで状況が刻一刻と変化していく環境下などを除き、大まかには初めに立てた方針に沿って各社員が作業を自立的に進める状況が理想のはずです。 こまめな進捗確認や変更事項の連続はマネジメントとプレイヤー双方の生産性を低下させます。方針を丁寧に正確に決め、事前に確実な共有をし、プロジェクト進捗管理システムを利用して遅延が発生したときに対処するに留めた方があらゆる意味でコストダウンです。

エンジニアの方々のように、プロジェクト型で各個人が作業を進め、その内容詳細は個人レベルでしか把握できない状況でも納期を厳守できる職種のビジネスマンの働き方を参考にするとよいかもしれません。

③解決法:同部署の社員どうしでの会話が相対的に減り、結束力が弱まる

別の部署や他のチームの社員、仲の良い社員などと隣り合って業務にあたる頻度が増せば、逆に同部署での会話が減少してしまうこともあります。しかし、業務上で必要な会話と多少の雑談以上の、生産性低下に繋がる会話の割合も減少していると見ることができます。

集中してディスカッションをしなくてはいけない場合は会議スペースを私用する、部下のモチベーションを確認したいときはオープンスペースでランチミーティングを催すなど、工夫の余地はあります。

④解決法:同じ場所に同じ社員と座ることが常態化し、フリーアドレスの意味がなくなる

製菓業界で有名なカルビー株式会社では、自分の意志とは関係なくダーツによって席を決めるという試みがあります。他にも、少なくとも昨日に座った席には座らないというルールを作り、ある程度の強制力をもって席を固定化させないようにしています。

コラボレーションを促すという目的であれば、席だけではなく近くに座るメンバーをランダムに決めても効果が期待できるでしょう。また、フリーアドレスでは、私物や固定機器は存在しないのでオフィスのレイアウト自体を一定期間で変えてしまえば、座る場所も自ずと変えざるを得ない状況を作ることができます。

⑤解決法:特定業種や職種特有の業務に、フリーアドレスが不向きな場合がある

フリーアドレスが向いていない場合は向いていないとはっきり諦めることが肝心です。その上で、部署ごとに使用可能スペースは限定し、その中では自由な席移動を認めるルールにすることによって解決に導けます。

また、「書類が多すぎる」「社内のIT化が進んでいない」という理由でフリーアドレス化が難しいという状況であれば、デジタル化を推進するきっかけとするのもよいでしょう。企業の文書を電子化するクラウドサービスを提供する、ペーパーロジック株式会社の調査では、東京の企業の36%が2020年度予算で ペーパーレス化システム導入費用を計上の運びと明らかになってます。デジタル化はいずれ取り組むべきと考える企業が増加しているということです。