テレワークの生産性を上げるには

フレスペ

テレワークにおける生産性を考える前提

①短期間で「テレワークは生産性が高いか」を判断するのは無理がある

2020年4月7日、首都圏で第一回目の緊急事態宣言が発令された時のことを覚えているでしょうか。

有無を言わさぬ自粛ムードの中で、この時期に出社をするのは社員間、クライアントへの感染リスクが高い、会社のブランドにも響く、などのネガティブな要素を考慮して、半ば無理矢理にテレワークに踏み切った企業も多かったはずです。中小企業は特にこの傾向が強かったように感じます。

国内第二2位の信用調査会社である東京商工リサーチの調査では、6月29日から7月8日までに企業(約1万4000社)に対し、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけとして在宅勤務やテレワークを導入したか、というアンケートをとったところ、一時的に導入したが既にやめてしまった企業が26%も存在していました。

3ヵ月程度の導入期間、加えてテレワークを開始するための準備期間も少なかった中でのことなので、誰もが試行錯誤の中で業務をしていたことでしょう。

報告の頻度や精度の定め方、資料の共有の仕方、部下の業務管理方法など、従来とは異なった方法が強いられる状況では、慣れるのが難しいということもあるかもしれません。慣れないことをしているので面倒に感じる、面倒に感じているので生産性が落ちている気がする、と錯覚している可能性があります。

②生産性の高い低いは、社員の仕事量/時間が向上しているか否かで判断する

テレワークでは、社員一人一人の顔を直接見ることは出来ないことはもちろん、「〇〇さんはプレゼン資料を作っていて、〇〇さんは電話営業をしているようだ」という状況の視覚的認知も不可能です。

そのため、社員の仕事のプロセスを肌感をもって把握したり、人当たりの良さや雰囲気の明るさなど、人としての個性を感じる機会も減ります。

そのため、人物評価と仕事内容評価の割合が、仕事内容評価に大きく傾きます。どれ程の時間でどれ程の量の仕事を終わらせたか、という事実だけが各社員の報告から明らかになるので、ある意味シンプルに生産性が判断できるように思えます。 ITリテラシーが低いために、ほぼ全ての業務をPCやモバイルで完結させることに抵抗がある、人の顔を見ながら会議をしなければ内容に深みが出ないなど、個人スキルや精神論に基づいた理由でテレワークにおける生産性低下を話にあげるのは、身も蓋もなくなってしまいます。

生産性の向上より先に、テレワークで生産性を下げない方法を考える

①自社で社内のデジタル化が、テレワーク可能なレベルで進んでいるのかを振り返る

某大手百貨店系列の会社の社員が、「テレワークをするために、持ち帰る資料を大量印刷しているんだ」と言っていたことに衝撃を受けたことがあります。

ある程度のペーパーレス化は、テレワーク導入のために最低限クリアしなくてはいけない要素の一つです。このように紙媒体の使用頻度が高いことや、テレワーク環境ではセキュリティが万全でないこと、コミュニケーション手段としてWEB会議やビジネスチャットがないなど、乗り越えるべきデジタル化のレベルがあります。 また、WEB会議ツールを使いこなせない、ビジネスチャットの会話進行についていけず、内容が把握しきれていないなど、デジタル化に適応するためのリテラシーが不足も無視できません。

WEB会議ツールを使えない人に使い方を教えるために時間がかかる、チャットの会話についてけていない人のために何度も同じことを情報共有するなど、主業務から外れた雑務が増えることによって、主業務の時間が少なくなり、生産性が低下してしまうのは様々な企業で嘆かれている問題です。人に聞かなくても自分で分からないことを調べて解決する、スピーディーなオンラインでの情報共有についていくために、自分に関係のある話題にはアンテナを立てておくなど、各社員の意識改革も行っていかなければ、足を引っ張りあうテレワークになってしまいます。 自社でテレワークを行った場合に、社員の生産性が低下しないかどうかの目安としては、フリーアドレスのオフィスにしても通常通りの業務進行が可能かを考えるとよいと思います。

デスクの場所に縛られず、基本的にはノートPCとモバイル機器だけで業務ができる場合に可能なフリーアドレス化は、テレワークが可能かどうかを試す一つの方法です。

②プロセス評価、やる気評価から、仕事量や営業成績などの結果評価に変える

テレワークの導入における懸念点でしばしば耳にするのは、社員が仕事をサボらないかどうかですが、それは、周囲の目がなければ気が抜けてしまうという消極的な理由からでしょう。極端な話に聞こえるかもしれませんが、裏をかえせば周囲の目をしっかりと気にして、仕事をしている雰囲気さえ出せばサボってないと判断されることもあるということです。

実際にオフィスワークの時は、その人がどれ程の時間でどれ程の仕事量をこなしたか、シビアには判断されていなかった場合もあったのではないでしょうか。

そもそも、人間なのですからサボれるのであればサボりたいというのは致し方ないこととも言えますので、マネジメントをする立場からすればサボりの心配はごもっともと言えます。とはいえ、WEBカメラで監視したり、30分おきに業務状況を報告したりしたりするのは、社員からするとストレスでしかありません。

リモートハラスメントという言葉も生まれてきたぐらいなので、世間的にも推奨はされない管理方法です。ではどうすればいいのか、その答えが結果ベースの評価方針への切り替えです。 何をどれだけやるかの目標設定、どれだけできたかの事実報告を厳格に行って評価を下すという明確な方針づくりが、サボり社員をなくす効果的な方法です。仕事のできる人とできない人、その差が事実をもって証明されてしまうのだという意識が芽生えれば、監視や密な経過報告を求めずとも精力的に働く社員は増えるでしょう。

本当の意味でテレワークの生産性を上げる3つの方法

①テレワークとオフィスワークを明確な意識をもって使い分ける

個人作業や、対面でなくてもいい会議はテレワーク下でも可能、ときっぱり割り切るとともに、直接ディスカッションしてアイディア出しを活性化させよう、契約に直結する重要な営業なので対面で話そう、などテレワークではなく実際に会ったほうがよい場合もあると思います。

重要なのは、会って話す必要性を言葉にして、同意を得て、会った時間を有意義にすることです。

②通勤時間にあてていた時間の有効活用をする

テレワークをの導入において、個人が受ける最もわかりやすいメリットが、通勤不要となることでしょう。

不要となった通勤の分の時間をどう過ごすか、生産性の向上や自身やチームのスキルアップ、心身のリフレッシュなど、目的を明確に持たなければ、このメリットを活かすことができたとは言えません。

もちろん通勤ストレスがなくなっただけで仕事の生産性は上がるかも知れませんが、組織としてテレワークの生産性を上げたいならば、時間の有効活用を積極的に推進するべきです。

新聞やニュース記事を読む時間が増えた社員は、始業後にチームの社員が参考になると感じた部分を全体共有したり、運動不足の社員は、ランニングを始めて健康的な生活をすることにより、集中力をアップさせるなど、社員の生活満足度と仕事の生産性の向上を相補的に行えるテレワークにできたら理想です。

③効率を最も意識したスケジューリングをして業務バランスをコントロールする

テレワークを導入すると、役職に関わらず仕事の進め方における裁量権が大きくなります。

求められている結果が〇〇なので、まずはこれから始めて、次はこれをいつまでに、といったように周りの顔色を伺うことなく自分に最適化したやり方で仕事が進められます。かかってきた固定電話をとったり、集中しているときに雑談で話しかけられたりすることもありませんし、休憩のタイミングもある程度自由です。

そのうえで、この話はWEB会議でしたい、次の会議は対面で、個人作業は〇時時から〇時まで、など状況にあわせて適切かつ効率的にスケジューリングをして、自分をコントロールしていくと生産性が向上するのではないでしょうか。 まとめ テレワークの生産性は仕事量/時間です。

オフィスワークからテレワークになると、慣れないことをたくさん始めることになるので面倒に感じることもありますが、それは一時的なものでもあるので生産性の低下と断ずるのはまだ早いかもしれません。 テレワークにチャレンジしていこうとするのであれば、まずは生産性の向上よりも、テレワーク化して生産性が下らないかどうか振り返ってみましょう。テレワーク化には必要な土台があります。 土台が整ったら、テレワーク下での個人裁量をフル活用して仕事の効率性を追及し、結果を出すことに意識をおきます。自由度が高いからサボるのではなく、自由度を活用して効率化を図っていきましょう。