テレワークと在宅勤務、どちらを選ぶか

コワーク

テレワークと在宅勤務には違いがある

テレワークの中に在宅勤務が含まれる

ICT技術(Information and Communication Technology)を用い、自社のオフィス以外で働いていればそれはテレワークといえます。ノートPCやモバイル端末を使って喫茶店でメールを返したり、ネットカフェの個室でWEB会議をしたりするのは、テレワークの一種です。営業職の外回り中にWi-Fi環境下で作業、サテライトオフィスへの出社、これらは「テレワーク」という言葉が現在のレベルまで浸透する前に行われていたことです。本来の意味からするとテレワークとは、実は別段新しい概念ではないのです。

在宅勤務に関しては、その名の通り自宅で業務することを指す言葉です。以前はフリーランスのエンジニア、デザイナーなど、限られた職種の方々に限定された働き方という認識が一般的でしたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で2020年4月7日に一都三県に大阪、兵庫、福岡を加えた緊急事態宣言が発令されてからというもの、様々な業種、職種のビジネスマンがテレワーク、その中でも在宅勤務をスタートさせ、一気に身近な働き方の一つとなりました。

テレワークの仕方は自由自在になった

数あるテレワークのあり方にいちいち名前を付けるというのも、ナンセンスになってきたのではないでしょうか。自分が好きな時に、好きな場所で心地よく働ける時代が到来したのかもしれません。その気になれば、海辺でパラソルを広げてマンゴーシェイクを飲みながら、ポケットWi-FiとノートPCで仕事ができるのです。もちろん、業務の性質上どうしてもテレワークはできないという方もいらっしゃいますが、テレワークをする人が格段に増えた現在、間接的に他人の在宅ワークの影響を受けることはあるのではないでしょうか。飲食店にWi-Fi環境や席ごとのコンセントがついたり、今まで現場に訪問してきた取引先の営業マンが、WEB会議を求めてきたりなど、自分自身がテレワークに縁がなかったとしても、テレワークへの理解は持つべき時代になりました。

テレワークをするのは家か外か、どちらがよいか

在宅勤務はとにかく楽だ、という考えは現実的に存在する

在宅勤務やテレワークはとても良い、と思う人は多いはずです。理由はサボりやすいからです。Googleで「在宅勤務」と検索しようとすると、サジェストに「在宅勤務 サボり」と表示されるのでこの共通認識はあながち間違っていないかと思われます。通勤で時間と体力を浪費しないことによって生産性が上がると、しばしば自宅テレワークを推奨する声を聞きますが、口に出しはしないものの「サボれる」と思っている人は多いはずです。2020年10月に株式会社マイナビが自社媒体であるマイナビニュースの会員、181人に対して行った調査では、「テレワーク中にサボったことがある」と答えた会員が74%も存在しました。サボりの内容は様々ですが、業務時間内で漫画や動画の視聴は、さすがに息抜きの域を出てしまっています。

サボっていたとしても、やることをやっていればOKという考え方もある

あくまで結果ベースでの判断ですが、漫画を30分読んで息抜きになり、その後30分の遅れなどものともせず与えられた仕事が1時間以上も通常より早く終わった、となったらどう判断するか迷うところです。褒められた行為ではないように思えますが、実際に結果が良くなっているのだからよいではないか、と言われれば理解もできます。漫画ほど露骨ではなくても、サボって昼寝をしてしまったという人も多くいます。テレワークや在宅勤務だからといって昼寝など言語道断だ、という企業からすると昼寝はサボりですが、GMOインターネットグループや三菱地所株式会社など、仮眠を許可する企業も存在します。眠気で生産性が落ちるくらいならば一旦寝てしまえ、というのも一つの考え方なのです。テレワークなので、サボっていたとしても周りの社員の士気は下りませんし、結果さえ出ていれば誰にも迷惑はかけていません。今後、生産性が上がるのであれば、お菓子を食べようが猫の動画を見て癒されようが許される、という考え方に世の中全体が移っていくかもしれません。

在宅勤務以外のテレワークで生産性が上がるケース

自宅でのテレワークは集中しにくい

家には誘惑が多いものです。本棚を見れば読みかけの漫画、ワンタッチでテレビがついてしまうリモコン、横になってしまいたくなるベッドなど、サボりたくなる要素がてんこ盛りです。加えて誰にも見られていないのでなんの抑止力もありません。とはいえ、自社のオフィスに向かとなると、通勤はつらい、上司に気を遣うのも面倒だ、といったネガティブ要素もあります。そんな時、自宅の近くにコワーキングスペースやWi-Fi環境があってテーブルの大きい喫茶店など、テレワークができる場所があればそのような問題も解決しますね。

自宅よりも良い環境が整っている場所でテレワーク

テレワークといえば、Wi-FiとノートPC、デスク、これらがあればよいのですが、プラスアルファの環境が整っていると、満足度は上がります。たとえば、図書館で調べものをしつつテレワーク、景色のきれいな場所でテレワーク、といったように、自分が心地よく仕事ができる環境があれば仕事に集中できるかもしれません。また、テレワークは一人でとは限りません。コワーキングスペースに複数人で集まってディスカッションをするときは、ホワイトボードがあったり、会議室のようなスペースを使ったりしたほうが便利です。自宅に会社の人を招きいれて仕事をするのも面白い試みではありますが、抵抗がある方のほうが多いでしょうし、椅子やデスク、部屋の広さなど諸問題が発生しますので、コワーキングスペースの利用が便利かもしれません。

在宅勤務をしていると家族の存在が障害になってしまう

家族の存在を障害とすること自体がよいとは言えませんが、仕事の中断につながることが多々あるようです。ビジネス上の問題解決を考えるメディア「Biz Hits」は、2020年6月にリモートワークをしている日本全国の男女合計961人対象で、「リモートワークの悩みに関する意識調査」を実施したところ、リモートワークの悩みで最多の票数を得たのは「家族がいて集中できない」の163人でした。家事を頼まれてしまう、子供がちょっかいを出してくる、目の前でテレビを見始めてストレスを感じるなど、家族との時間が増える一方で仕事の生産性を下げる要因にもなっていたのです。

テレワークの中でも、在宅勤務の生産性が勝るケース

朝がどうしても苦手で早起きからの通勤が最上の苦痛

長く寝ていたいから在宅勤務をしたいというのは怠慢ではないかと思われてしまうかもしれませんが、実際のところ日本の睡眠不足問題は深刻です。積水化学工業株式会社の調査研究機関である株式会社住環境研究所が、2019年1月、30~70歳代の男女14,000人を対象に行った、「睡眠状況に関する実態調査」では、829人の有効回答のうち34%が睡眠不満であり、その理由として91%が睡眠不足でした。通勤に1時間以上かかる、化粧をする時間のために早く起きる、子供のお弁当を作るなど様々な理由があると思いますが、その時間の合計が1日1時間半程度あるとしたら、これは睡眠不足の原因となっていることは想像に難くありません。在宅勤務ならば確実に睡眠時間を増やすことができ、睡眠時間の確保、ひいては生産性向上につながります。

誰かに見られていなくても自分を律して集中できる

これに関しては個人の性格に大きく依存します。全体からすると少数派であるかとは思いますが、個人で黙々と作業をするエンジニアやデザイナーの方々はこのタイプが多いようです。この方々からするとわざわざ期の散る人の多いところに時間をかけて向かうなど、デメリットだらけであると感じるかもしれません。自宅でのテレワークのデメリットを感じない場合、テレワークは自宅で、というのが最善でしょう。

在宅勤務かそれ以外のテレワークで甲乙つけがたいケース

在宅勤務もそれ以外のテレワークも、どちらも良さを感じる

テレワークは自宅か外か、どちらがよいのかを考えているので矛盾に聞こえるかもしれませんが、いいとこどりをするという方法がいいと思います。気分転換に海でも見ながらテレワークにしよう、といった気分の問題で選択するもよし、体調があまりよくないから自宅でテレワークにしようという状況依存的判断でもよいのです。今日はなぜここで仕事をするのか、一度考えてみて自分の働き方をコントロールできるのがテレワークの良さなのかもしれません。

いかなるテレワークもしっくりこない

やはり仕事仲間とは顔を合わせて直接話をしながらでないといけない、チャットやメール、電話をいちいちするのは面倒、WEB会議はいまいち会議をしている実感が湧かないなど、どうしてもテレワークは肌に合わないという人もいます。それは仕方のないことです。しかし、テレワークをすることで生産性が上がったり、オフィス縮小で会社のコストダウンにつながったりといったメリットをすべて考えなしに潰そうとするのは良くないかもしれません。テレワークに反対の自分がいる一方で、テレワークに賛成の人がいて、どちらにも言い分があります。それは勝ち負けをつける問題ではないので、オフィスワークとテレワークをミックスした働き方を議論していく必要があります。

客観的な生産性とあなたの感じる生産性は異なる

あなたが個人的に感じる生産性

自分が仕事をしやすい環境=生産性が上がっていると思ってはいないでしょうか。あくまで生産性とは仕事量/時間です。気分よく仕事をするのは重要なことですし、働く環境は人生の満足度の一部であるともいえるので、テレワークはすばらしい面をたくさん持っているのですが、それは定量的に出した成果とは別軸で考えなければなりません。自分のマネジメントは自分で行いやすい一方で、結果ベースで仕事を判断されるという怖さもあるので、今日はテレワークだったがどのぐらいの結果を残したか、報告できることは何か、ということを自分に問いながら仕事をしていくと、テレワークで生産性を下げないことに繋がるかもしれません。

会社が判断するあなたの生産性

会社全体からすると、テレワークなのかオフィスワークなのかは、仕事を進めるうえで手段の種類でしかありません。数字で表される目標、もしくは一定量の業務を終了させる期限を設け、それを達成させるというのが、収益を上げて減収を防ぐうえで企業が重視するポイントです。つまり、業務の質、量、時間のバランスさえ各社員が保てていればどこでテレワークをしていようと計画に狂いはありません。生産性を上げるために今日はどこどこでテレワークをします、今日の成果はこれです、というように、結果ベースに基づいた働き方の選択をしていく必要があります。

まとめ

テレワークと在宅勤務1

会社それぞれ、個人それぞれにテレワークの形が存在する社会になりました。家でのテレワーク、外でのテレワーク、今自分が生産性を上げられる場所はどこなのか、自分との相談で決められるようになり始めると同時に、お互い姿が見えない中で勤務終了時にあげた報告の内容、結果が個人評価の中枢になりつつある変化も自覚することが大切です。テレワーク社会でビジネスマンとして生きる中で、自分の力を引き出す働き方を模索し、その結果がどこでテレワークをするかに帰着するのかもしれません。