近年シェアオフィスやレンタルオフィスといったビジネスが多く展開されるようになってきています。フリーランスや自宅で在宅ワーカーとして働く方々にとって作業に利用しやすい場所を提供することを目的として、仕事のしやすい環境、必要なスペースを提供するサービスとしてその市場価値を高めて来ています。
そんな中、今では様々なサービスを提供するところが増えてきておりそれぞれ個性的なスタイルのサービスを展開するなど競争も激化して来ています。
オフィスの呼び方も様々でまだ統一されていない部分もありますが会議室で打ち合わせができたり、個室で集中して仕事ができたりと従来のオフィスに求められていた機能に特化したものなどは概ねレンタルオフィス、落ち着いた雰囲気の自由なオープンスペースを持ち人々の交流や情報交換にも価値をもたせたものをシェアオフィス、またはコワーキングスペースなどと呼ぶことが多いようです。
特にコワーキングスペースではドロップイン(会員登録などなく一時的に利用できる制度)での利用も可能でさまざまな職種の人々が活用でき時間やスペースを共有できるというその特徴が他のシェアオフィスとの違いとして区別化される最大のポイントとなっているようです。この記事ではそのコワーキングスペースの歴史からその意味とメリットは何なのか、知っておいて欲しいコワーキングスペースの活用方法など他と違う点なども解説していきたいと思います。
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そもそもの背景として、今までは各企業が起業時にオフィスを持ち拠点として従業員が集まって仕事を行うという事が一般的でありほぼすべての企業が同じスタイルをとって経営されていました。もちろんこのような運営方法が一般的であったことは当たり前のことなのです。インターネットが普及する前であれば各従業員が同じ仕事場に集まらなくては意思の疎通を図るツールも無いので仕事にならなかったのは当然です。
同じ勤務時間で従業員が集まって仕事をすることが最も効率がよく、それを疑う余地などなかったのです。この為企業にとってオフィスを持ち本社を構えている事は起業のために最低限必要なことであったのです。今ではインターネットの普及などによる大きな時代の変化に伴いこの固定概念から変革が起きています。
起業家は必ずしもオフィスを持つ必要がなく、レンタルオフィスなどで住所を登録して契約することで起業するといったケースも可能になりました。この流れの中レンタルオフィスという概念が生まれて来ます。レンタルオフィスは既に造作されたスペースを貸し出すのでオフィスビルのフロアーを賃貸するのとは違い企業自体でオフィスの造作を行う必要がありません。
レンタルオフィスは造作されたスペースを1つの企業、または個人に貸し出すのでレンタルしている間はスペースを専有できるメリットがあります。個人ごとに自分専用のデスクや席を確保したりと普通のオフィスと同じような使い方ができます。また事業によっては所在地の他、専有スペースを持っている事が必須条件となっているものもありそのような業種に関してはメリットのあるものとなります。
ではシェアオフィスとはどのようなものなのでしょうか。シェアオフィスはその名前からも分かる通りオフィスをシェアする事が大きな違いといえます。一つの空間、施設の中に複数の企業が存在し専有できるスペースは無いか、あっても小規模となります。会議室やフリースペースなどを共有して使用することが必要となりますが最大のメリットは賃料が抑えられる事や気軽に転居できることとなります。
シェアオフィスを利用する中でも個人や小規模グループでの利用といったケースもありますが、そういった部分に特化し更にコミュニティを意識した構造となっているものを一般的にコワーキングスペースと分類しています。コワーキングスペースはシェアオフィスの中に新たにコミュニティの概念を取り入れた考えから生まれた、出会いや協働性を意識したコンセプトを持ちます。
以上の事を踏まえてコワーキングスペースの成り立ちなどからその他のワークスペースとの差を見ていきたいと思います。
コワーキングスペースというものは現在多くのフリーランス、リモートワーカーといった働き方の方々には一般的になってきたものであると感じます。その数も世界中で増えて来ており大きな時代のでは一体いつ頃コワーキングスペースは生まれ、発展して来たのでしょうか。
一般的にはコワーキングスペースの始まりは2005年にアメリカのサンフランシスコでBrad Neuberg氏というソフトウェアエンジニアが始めたとされています。Neuberg氏は在宅勤務者たちの生産性向上やコミュニケーションによる発想の拡大を目的としたコミュニティ形成を意識したワークスペースを設立したいと考え今のコワーキングスペースの元となるような形を作り上げて行きました。その後このような形のコワーキングスペースはアメリカを中心に拡大して行きました。
2005年にコワーキングスペースが作られる以前からこのようなアイデアのワークスペースは存在していました。1995年にドイツのベルリンでC-baseという世界初のハッカースペースが作られており、コワーキングスペースの先駆けと認識されています。
1999年にはアメリカのゲームデザイナーBernard DeKoven氏がニューヨークに42West24という会員制のレンタルオフィスを設立し、Coworking(Co-workingではなく)という言葉を生み出し非競争的、共働というスタイルを取ったワークスペースを設立する。アメリカにおいて現在のコワーキングスペースの先駆けとなったのはこの42West24であるのは間違いないが、まだこの時はコミュニティというものに重点を置いたものではなく、会員同士のコミュニケーションに対して特にイベント等もないものでした。それでもアメリカでは2001年のインターネットバブル崩壊により多数のエンジニアが契約社員にされておりこういったスペースのニーズは増えて来ていました。
Neuberg氏がコワーキングスペースの構想を得たのは2005年のことでした。彼は経済的に貧しい状況の中、Rojoという企業で仕事についていました、そんな中で仕事における個人の自由や独立性を持った働き方と多数のコミュニティで形成していく仕事の仕方との乖離に葛藤を感じていました。
彼は自分の理想の働き方を求めてコミュニティの一体感と独立性を兼ね揃えたワークスペースの構築に取り掛かって行きました。Neuberg氏による最初のコワーキングスペースはサンフランシスコで産声を上げました。
その名もサンフランシスココワーキングスペース。初期の頃は施設の一部を週2回借り、コワーキングスペースとして利用させてもらう形でした。週2回だけのレンタルスペースのため毎週スペースでデスク等の構築から解体までを行わなくてはならず、また月に300ドルという賃貸料金を用意するのも当時のNeuberg氏には重荷であり、最初の数ヶ月は父親からお金を借りて賃料を払っていたそうです。
最初の数ヶ月は全くコワーキングスペースを訪れる人がおらず、自身でチラシや名刺を持ってカフェなどで仕事をしている人たちに声をかけていったと言います。
その後徐々に人が集まるようになっていったサンフランシスココワーキングスペースでしたがNeuberg氏によるとその躍進をおこした要因の一つは見に来てくれた人にこのアイディアを真似て自分のオリジナルのコワーキングスペースを作る事を許可したこと。
2つ目はChris MessinaとTara Huntという二人の知り合いがオンラインのコミュニティーを作ってくれ、その中でコワーキングスペースを宣伝していってくれたこと。こういった活動を歴てサンフランシスココワーキングスペースは1年程で閉鎖し、代わりに初のフルタイムコワーキングスペースであるHat Factoryを立ち上げる事となりました。
このコワーキングスペースのトレンドはそれほど時間がかからずに広がりを見せます。2006年にはニューヨークにBrooklyn Coworkingが開業、その後も各地にコワーキングスペースは広がり2012年には今でもアメリカにおけるコワーキングスペースの大手GCUC(Global Coworking Unconference Conference)が設立される等その数は世界中で2000箇所を超える様になり2021年現在ではImpact Hub、WeWorkなどの大手の躍進もあり市場は2024年までに40,000箇所を超える規模に膨れ上がっているところです。
日本で最初のコワーキングスペースとされているのは神戸のカフーツです。2010年の5月に開業しておりその後8月には東京にもパックス・コワーキングが開業して日本のコワーキングスペースの先駆けとなりました。
現在では様々なコワーキングスペースが開業し、その数は300を超えるとされています。そんな中コワーキングスペースの競争も激化してモノづくりに特化した店舗やシェアオフィス機能を併用できるようなもの、立地や居心地にこだわったものまで様々な個性を併せ持つコワーキングスペースが出来てきています。
現在のコワーキングスペースの位置付けとしてはレンタルオフィスやシェアオフィスに併設されたものや、施設などに併設されて運用されているものが多いと思います。シェアオフィスの中でもフリースペースやカウンタータイプの席を設けてある一角をコワーキングスペースとしているところが多いようです。
無料でフリードリンクなどを提供しているところも多く、ほとんど全てのコワーキングスペースで利用者同士がコミュニケーションを取れるようになっています。これはコミュニティ を形成するというコワーキングスペースの概念によるものであります。
コワーキングスペースはカフェのような作りになっている場合も多く一見はカフェで仕事をするのと変わらなそうですが、コワーキングスペースとカフェで仕事をするのと異なる点はコミュニティ性にあり、目的が同じ人々の集まりになるので周りの目を気にしなくて良く、仕事とコミュニケーションをバランスよく行える施設と言えます。
コワーキングスペースの利用方法としておすすめなのはドロップインで実際に体験して見ることだと思います。アクセスの最もいいところから初めて見ればいいかと思います。複数のコワーキングスペースを体験すると各店の個性や設備の違いがわかってきます。
実際に雰囲気や設備が気に入ったところが見つかったらそこのコミュニティに参加してみると良いと思います。場所によってはセミナーを開催していたり、各種イベント等を行って利用者同士のコミュニケーションを後押ししているコワーキングスペースもあります。自分が何を求めているのかに寄ってコワーキングスペースを選べるくらい現在では様々な個性を持った施設が増えて来ています。
コワーキングスペースの中でも施設併設型というものも多くあります。特におすすめなのが銭湯、サウナに併設されたもの。全国に結構あるので気になる方はお近くの銭湯などを調べてみると以外にコワーキングスペースもあるかもしれません。今回紹介するのはコワーキングスペースが変わっているという点を重視しました。
コワーキングスペースに関しては元々銭湯の一部であったところをイメージを残しつつ改装。湯船の形をそのままに作業机があったり、サウナのような会議室、シャワーブース状の半個室など遊び心満点のコワーキングスペースとなっています。そしてなにより本当のお風呂やサウナも利用できるので仕事の合間の休憩や仕事が煮詰まったときにリフレッシュに最適な施設です。
他の利用者ともサウナやお風呂でコミュニケーションを取ったりとできるのでお風呂やサウナが好きな方にはおすすめです。変わった作りのコワーキングスペースですがwi-fiや電源設備など基本的な設備もしっかりと整っており作業も快適に行なえます。
最高の環境で仕事がしたい方、都会の喧騒に疲れている方におすすめ
こちらは鎌倉にある一軒家を改装したコワーキング。日本家屋の風情を残しつつ土間やいろり、畳など趣のあるスペースとなっています。また近くには海あり森あり温泉ありと、息抜きの仕方もたくさんあります。一日中最高の環境に身をおいてリラックスしながら作業がしいたい方にはおすすめです。
東京らしいおしゃれなコワーキングスペース
waves nakameguroさんは元々海外の方向けのホステルですが2019年からコワーキングスペースもオープン。ドロップインで利用しやすく立地も中目黒駅からすぐとアクセスも良好。何よりも内装がおしゃれなのでクリエイティブな仕事をするには最適な環境があります。また利用時に出入りもできるシステムのため中目黒をお散歩したりおしゃれなレストランで食事したりも可能なのが嬉しいところ。
ここまでコワーキングスペースの持つ歴史からその意味合いをお伝えしてきましたが、コミュニティの形成、コミュニケーションと言う部分が最もコワーキングスペースの魅力を表すところだと思います。
こう聞くとコワーキング初心者の方は「なんか敷居がたかいのかな」、「常連みたいな人が多くて居心地悪くないかな」とか思う方もいるかも知れません。でも心配には及びません、今では色々なタイプのコワーキングスペースが存在するので自分が好きな要素を含む場所を調べて行ってみるのが一番だと思います。
おしゃれな家具が好きな方、自然が好きな方、温泉が好きな方など自分の好きな環境を探して行けば同じ環境が好きな人がいるはずです、まずは自分にあった場所を探して行ってみるのが良いでしょう。働き方自体が変わってきた中、もっと自分にあった働き方をするためにコワーキングスペースの魅力をお伝えできていれば幸いです。
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