サテライトオフィス(satellite office)とは、satellite(衛星、衛星の)、office(事務所)という、英語の意味が表すように、企業や公官庁、団体、学校の本社、本部、本庁舎、本校などに類するオフィスを惑星に、それ以外のオフィスを衛星に見立て、惑星を周回する衛星のように本社以外の各拠点にあるオフィスのことを言います。
サテライトオフィスという表現と、支社や支店、営業所の違いは基本的にはありません。
各企業が何と表現するかによります。 しかし、支社や支店、営業所は、地域に根ざしたビジネス拠点としての機能という意味合いが強く、サテライトオフィスは、本社や本部、本庁舎、本校と同じ業務が行える、小規模の代替オフィスという意味合いが強いという考え方もあります。
また、支社や支店、営業所は、業務自体に重きを置き、サテライトオフィスは、従業員やその生活に重点を置いているという考え方もあります。
例えば、支社や営業所へは業務命令として転記やその所属が決まりますが、 サテライトオフィスは働く場所としての選択肢の一つとしてあるので、ある程度働く従業員にどこで働くかの裁量が任されますし、サテライトオフィスで働いても、所属しているメインオフィスは違う場合もあり得ます。
1984年9月にNECが「C&Cサテライトオフィス」を吉祥寺に開設したのが、 日本初のサテライトオフィスの試みであると言われています。
サテライトオフィスは、その当時はテレコミューティング(telecommuting)、今で言うテレワークと深い関わりがあります。その時期NECは、コンピュータ&コミュニケーション(C&C)をグループ全体でのスローガンとして、コンピューターと通信の融合が起こるのが世界の流れで、どこにいても仕事ができる時代が来ると考えていました。 そのような状況の中、日本電信電話公社(現在のNTT)からNECへ、後の公衆デジタル通信サービスとなるINSネットの応用実験の参加要請があり、武蔵野地区の実験へ参加するために開設されたのが、吉祥寺のサテライトオフィスでした。
本格的なサテライトオフィスは、1988年5月、埼玉県志木市、東武東上線の柳瀬川駅徒歩1分の場所に開設された「志木サテライトオフィス」とされています。 住友信託銀行、鹿島建設、富士ゼロックス、内田洋行、リクルート、住信基礎研究所の6社によって、「志木サテライトオフィス研究会」が作られ、日本初の職住近接オフィスを実験的に運営されたのが始まりです。
1991年の実験終了後は、株式会社志木サテライトオフィス・ビジネスセンターが運営母体となり、現在も運営を続けています。
志木サテライトオフィスの開設当時は日本は不動産バブル期でした。 東京の地価が歴史的な値上がりをしている時期で、自宅を東京都心で購入することは難しく、都心から郊外への人口流出(ドーナツ化現象)が起こっていました。 その様な時代的背景があり、オフィスを都心から移し、住まいに近い郊外にも作るという職住近接の考えを実験の形にし、大手企業の社員が十数名参加したのがしたものが、志木サテライトオフィスの始まりでした。
その当時、大きくテレビや新聞雑誌で大きく取り上げられたそうです。 「昼は自宅に帰ってランチが食べられる。」や 「家に早く帰宅でき、家族と充分に会話やコミュニケーションの時間が取れる」など、 新しく素晴らしいライフスタイルが送れると、何度も紹介されました。
1991年3月ー1993年10月のバブル崩壊という、景気後退期を迎え、異常な地価の高騰があった都心の地価が下がり、都心から郊外への人口流出(ドーナツ化現象)の逆の現象である人口流入・都心回帰が起こる。
都心オフィス賃料や都心住宅価格が下落し、郊外にサテライトオフィスを開設する必要性が低くなっていきました。 また、インターネットやパソコンが一般的に普及したことにより、自宅でも仕事ができるSOHOが増え、在宅ワークもできる環境が整いはじめた時期でもありました。
軽量のノートパソコンやスマートフォン、タブレットなどのモバイル端末が充実し、wifiや無線LAN、モバイル通信などのネット環境の充実も進んでいる現在、ビジネスチャットやオンライン会議ツールなどクラウドサーバーを活用したサービスが多種多様にあり、一昔前より、より柔軟に快適にどこにいても仕事ができる環境が整いました。
また、新型コロナウイルスの感染拡大により、政府から外出自粛要請があり、テレワークが推奨され、在宅勤務のみやオフィス勤務のみの二者択一ではなく、多様な働き方が時代に求められていることになりました。 そういった中の働く場所の選択肢の一つとして、自宅近くで仕事ができるサテライトオフィスが、注目を集めていて、急速に市場を伸ばしています。
サテライトオフィスが複数拠点ある場合、移動の時間を少なくできます。
例えば、営業部門では、zoomやMicrosoft teamsなどのWEB会議ツールが一般的に普及したことにより、対面での商談、WEB商談など混在するケースがあると思います。
クライアント先で対面商談のあと、WEB商談の予定が入っている場合、WEB商談をするためには、ある程度静かなネット環境がよいところから、参加する必要がありますが、 クライアント先から、所属拠点が遠い場合や適度な環境が近くにない場合は、移動時間や適切な環境を探す手間が必要になります。
また、その移動時間を考えスケジュールを入れていくことになりますので、 移動時間を考慮しなくてもスケジュールを入れられる場合に比べると、仕事の進みも遅くなります。
そういった問題を、会社として複数のサテライトオフィスがれば、解決し、移動の時間や手間を少なくすることができます。
また、従業員の移動時間は、通勤時間も含まれます。全国で約100拠点の法人向け多拠点型サテライトオフィスサービスを提供している会社もあるので、そういったサービスを活用することで、メリットを享受できるようになります。
サテライトオフィスとは意味、歴史 、メリット、デメリット (2)
移動時間や手間を少なくできることにも関係しますが、オフィスと自宅の距離が遠い従業員にとって、通勤時間に多くの時間を取られ、満員電車に乗らなければいけない場合は、ストレスにもつながります。
また、育児や介護の必要の場合、決められた時間に保育場や病院、介護施設などに送り迎えをすることになります。 その場所から、オフィスが遠い場合は、通勤に長い時間をかけることが不可能になり、通勤時間の問題で、離職をしてしまうケースもあります。
そういった問題も、複数拠点サテライトオフィスがあれば、解決され、通勤時間や無くても問題の無いストレスが軽減され、従業員満足度が上がり、結果的に生産性向上や離職防止につながります。
働きやすく、生産性も高く、従業員満足度が高くなることによって、 他社との比較で、優秀な人材に、会社が選ばれやすくなるという面と、 それだけではなく、全国に複数拠点としてのサテライトオフィスがある会社は、 アプローチできる人材の種類や層が広がるという面があります。
都心だけに優秀な方がいるわけではありませんし、人の価値観はそれぞれで、様々な考え方があり、大切なものの優先順位も違います。 様々な働き方や働く場所が提供できることにより、 例えば、子育てを優先したい、暖かい場所でのんびりと働きたいなど、そういう価値観がある優秀な方にも仕事をしてもらえる環境を、サテライトオフィスがあることにより提供でき、優秀な人材を確保しやすくなります。
BCP(Business Continuity Plan・事業継続計画)とは、地震、津波、大雨、大雪などの自然災害、大火災、事故、停電など、緊急事態が起こった場合に、重要業務や事業資産の損害を最小限にとどめ、事業の継続や早期復旧を可能にするために、平時に行うべき活動や準備、緊急時に行う方法や手段を取り決めしておく計画のことですが、 BCP対策の方法の一つとして、分散化があります。
分散化とは、災害時の地域インフラの影響を受けないために、業務の拠点や基幹システムを複数の地域に分散させることを言います。 このように、サテライトオフィスを複数拠点持つことは、BCP対策の一つにもなります。
サテライトオフィスで仕事をするということは、オフィスの様々な機器がインターネットにつながったままになり、不正アクセスやウィルス感染などの脅威に常にさらされていることになるので、セキュリティ上のリスクが増し、その対策が必要になります。
また、サテライトオフィスを、共用のサテライトオフィスサービスを活用して、 開設する場合は、他人とスペースを共有するため、個人情報や自社の重要な経営情報などの取り扱いに注意し、常にセキュリティーの意識が必要になります。 同様に、ノートPCやタブレットなどの端末の紛失や盗難にも意識を配る必要があります。
サテライトオフィスで仕事をするということは、ビジネスチャットやWeb会議などで、情報共有やコミュニケーションを取ることが多くなると思います。
社内でITツールの利用に習熟していれば、便利で、コミュニケーションには大きな問題はないと思いますが、対面して得られる、表情の微妙な変化や、空気感などは得られません。 そういった点は、デメリットの一つとなります。
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