シェアオフィスとは、オフィス形態の一つで企業や個人がオフィス空間や設備などをシェアするオフィスです。正式には「shared office」(シェアードオフィス)が英語での表記になり、それを日本ではシェアオフィスと呼んでいます。
「shared」(形容詞:共用の、共同の、共有の )、「 office」(名詞:事務所、オフィス、会社 )、「共用の事務所」という意味です。
また、シェアオフィスと近しい意味の言葉で、コワーキングスペースという呼び方もあります。「coworking space」が英語での表記になり、「coworking」(事務所スペース等を共有しながら独立した仕事を行う共働ワークスタイルを指す )、「space」(空間)、「共同で働く場所」という意味です。
コワーキングスペースはシェアオフィスとは異なり、それぞれ独立した仕事を抱えるワーカーが集まり、コミュニケーションを通じて情報や知恵を共有することで新たな価値を創出しようとするスペースという点に特徴があるという説もあります。
歴史的な背景を見ると、本来的にはシェアオフィスとコワーキングスペースは違うものと考えるのが妥当だと思いますが、シェアオフィス、コワーキングスペースに明確な違いはないく使われている場合もあります。 施設や運営会社により呼び方がマチマチで違います。 しかし、概ね、コワーキングスペースはオープンスペース、シェアオフィスは、オープンスペースも個室もあるという印象です。
“通信技術を活用したコミュニケーションを指すICT(Information and Communication Technology=情報通信技術)の発展により、いつでもどこでも時間や場所を問わずに働くことができるようになりました。
いわゆる「テレワーク(telework)」や「リモートワーク(remote work)」です。ちなみに厚生労働省は、テレワークを「ICTを活用した時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」と定義しています。
シェアオフィス(コワーキングスペース)の生まれた背景にはこのテレワークが大きく関係しています。
1995年にドイツのベルリンで非営利団体のc-baseが設立。Hackerspace(ハッカースペース)と言われる、非営利のエンジニア向けに共同のワークスペースでWifiサービスを提供したものが生まれた。
これがコワーキングスペースの原点とされています。コワーキングスペースと言う名称が生まれたのは、2005年の米国とされています。
ソフトウェアエンジニアのBrad Neuberg(ブラッド・ニューバーグ)氏が、事務所で一人で閉じこもって働くことに飽き飽きし、仕事と他者との交流を両立できる理想的な職場を求め、まずカフェなどの飲食店で仕事をしましたが、飲食の注文でコストがかかり、他者との交流が生まれず狙い通りにいきませんでした。そこで、市民センターの一室を借り、在宅で仕事をするワーカーに向けて広告を出したのがシェアオフィス(コワーキングスペース)原点とされています。
日本初のコワーキングスペースは、2010 年 5 月に神戸市でオープンした「cahooz(カフーツ)」、東京で最初、全国2番目は「PAX Coworking(パックスコワーキング)」とされている。
コワーキングは、co-working とハイフン付きで書く場合と、coworkingとハイフン無しで書く場合がある。 co-working という単語は昔からあり、同じ会社の同僚という意味。今のコワーキングという概念は、前述のようにBrad Neuberg(ブラッド・ニューバーグ)氏の呼びかけによって始まったとされています。
その時に同僚を意味するco-workingではなく、独立した個人が集まって仕事をする場所という意味の言葉として、coworkingという単語を作り出したとされている。
なので、co-working と coworking では意味が違ってきます。そのことから、本来的にはシェアオフィスとコワーキングスペースが違うものであると言えると思います。
一般オフィスの賃貸借契約でオフィスを開設する場合、多額の初期費用がかかります。
敷金(保証金)、礼金などの費用で6か月ー12か月分の賃料を支払う場合が多く、それだけで数百万円の費用となります。
更に、オフィス家具、内装工事費、通信インフラ設備を整えるのにかかる費用などが必要となります。 シェアオフィス(コワーキングスペース)でも入居時に保証金等がかかる場合がありますが、賃料1か月ー3か月分程で、基本となる月額賃料自体が低いことから初期費用を安くすることができます。
また、保証金等がかからない施設や、フリーレントなどのキャンペーンを行っている施設もあります。
一般オフィスの賃貸借契約でオフィスを開設する場合、入居当日にITインフラやオフィス家具を整えることは容易ではありませんが、シェアオフィス(コワーキングスペース)なら、ネット環境やOA機器などのITインフラ、デスクやチェア、収納などのオフィス家具など、業務に必要な環境が最初から整っているため、すぐにビジネス業務をスタートできます。
一般オフィス賃貸の場合は、間取りに合うオフィス家具探し、家具が届くまでの時間、インターネット環境の構築、OA機器調達など、手間や時間が必要ですが、シェアオフィス(コワーキングスペース)なら、そういった手間や時間が必要がありませんので、初期費用、時間の節約になります。
シェアオフィス(コワーキングスペース)の賃料には、一般オフィス賃貸であれば当然費用の発生する水道光熱費、管理費、設備のメンテナンス費が含まれていることが多く、こうした費用を負担する必要がありません。 またOA機器やインターネットの回線の不具合や不調などが起こった場合、トラブルシューティングを施設運営側に任せられるのも、手間や時間などの負担を抑えられることになります。
一般オフィス賃貸では社歴や信用等で、入居が難しい場合でも、シェアオフィス(コワーキングスペース)なら一等地の住所の施設やビルでオフィスが確保できます。
当然、名刺、WEB等でその住所を記載することができ、施設やプランによっては、会社登記までできるところも多くあります。
一等地の住所であることや有名ビルに入居しているなどで、信用や印象は大きく変わりますので、ビジネスを進める上で大きなメリットの一つです。 一般オフィス賃貸では、一等地の住所や有名ビルで契約するには高額な費用がかかります。 また少人数に向いた適度な広さのオフィスを探すことが難しい場合もありますが、シェアオフィス(コワーキングスペース)なら一等地の有名ビルに1人からでもオフィス入居が可能です。
シェアオフィス(コワーキングスペース)の大半は、1名用から数十名用まで複数のサイズの個室が用意されています。
ビジネスの状況によって従業員が増減した場合、住所を変更せずにビジネス事業を継続できるのは、大きなメリットの1つです。 また、年間契約の一般オフィス賃貸の場合、次の更新時期まで待つ時間や、新たにオフィスを探す手間、名刺やWEB、登記等の各種住所変更の手続きなど、煩わしい時間と手間を要し、登記変更料など各種変更には費用もかかります。
一般賃貸オフィス、自宅やカフェ等にはない、シェアオフィス(コワーキングスペース)の魅力が、コミュニティや情報交換の機能です。多数多様な業種、業界のワーカーが利用するシェアオフィス(コワーキングスペース)では、交流会やパーティーなどのイベントが開催されることがありますし、室内レイアウトや休憩所など、交流を促進するための工夫がある施設もあります。
この様な機会を活用することで、ビジネスの拡大やアライアンスにつながる可能性があります。 1人や自社内のみで、仕事を続けていると、他業種や他業界の人たちだけでなく、同業者との交流の機会も少ないかもしれません。 その点、シェアオフィス(コワーキングスペース)であれば、自然と多種多様な業種・業界の人たちとの接触機会が増えますので、新しい情報をキャッチアップしたり、情報交換やスキルアップなどの新たなビジネスチャンスを作ったりすることが、なかなかできません。 しかし、コワーキングスペースで作業すると、多種多様な業種・業界の人たちとの接触機会が増えます。 さまざまな交流をすることで、情報交換やスキルアップ、あるいは新たなビジネスの創出といった機会を得ることができる可能性があるのです。 コワーキングスペースは、交流を促進するために室内のレイアウトが設計されていたり、 休憩所を設けたりするなどの工夫があります。また、コワーキングスペース主催の交流イベントが行われることもあります。
多くのシェアオフィス(コワーキングスペース)では、共用部分が充実しており、 ラウンジや会議室等の共有スペースを入居者でれば使用できます。
一般賃貸オフィスでは、専有部分に自前で会議室等を用意することになりますが、シェアオフィス(コワーキングスペース)では、その必要がないケースが多く、会議室に既に、Wi-Fi、テレビモニター、ホワイトボードなどの備え付けてあるので、共有スペースでクライアントとミーティングや商談やプレゼンテーションができるので、場合によってはセミナーの開催なども可能です。
一般的なオフィスには、取引先などからの電話や来客対応のための窓口機能や事務員がいる企業が多いと思います。社員1人は必ず残り、電話に対応するなどのルールがある企業もあるようです。
しかし、1人での起業など人員が少ない場合は、日々の営業活動や出張などで、対応がうまくできず、機会損失があるかもしれません。その点、シェアオフィス(コワーキングスペース)では、受付の有人、無人の施設があります。
常駐し来客対応、バイリンガル対応、電話代行や秘書サービス、雑務、経理、総務業務など、施設によって様々なサービスがあります。人を採用せずに、こういった便益を受けられるのもメリットの一つです。
一般オフィス賃貸の場合は、退去時に原状回復工事を行えば内装を変えることは自由です。
しかし、シェアオフィス(コワーキングスペース)では、内装の変更は不可です。内装を自由に変更したい場合は、シェアオフィス(コワーキングスペース)は向かず、デメリットと言えるかもしれません。
快適に仕事をするために、インターネットの回線スピードは大変重要です。
シェアオフィス(コワーキングスペース)では、ほとんどの場合、共有無線LAN(wi-fi)を提供していますが、多くの利用者で共有することにより回線スピードが遅くなってしまうことがあります。
施設によっては、別途、専用の回線を入れられるところもありますが、インターネット環境については、特に、事前に運営会社に確認をしておくことをおすすめします。 有線接続の対応の有無、有線LANケーブル貸出有無、別途wi-fiや個別回線の契約ができるか、実際に下見の時に回線スピードを自身でチェックするなど、確認が必要になります。
シェアオフィス(コワーキングスペース)は、多くの利用者でオフィスを共有し、様々な人が出入りがするという性質上、共有スペースでは、その気になれば簡単に誰かの私物に触れることができますので注意が必要です。 顧客データ、資料、印鑑、現金等をしっかり管理するために、専用スペースに金庫を購入し、管理を徹底されている会社もあります。 データをPCに残さず、クラウド上に保管する、席を少し立つときにもPCにロックをかける、ロッカーを使うなど、自社の方しかいない環境よりは、セキュリティに対する意識が必要になるかもしれません。
シェアオフィス(コワーキングスペース)で、トラブルやデメリットの筆頭にあがるのが、「音」にまつわるものです。オープンスペースでの話し声、電話、キーボードのタッチ音など、完全に遮音することはできないため、人によっては、業務に支障をきたすおそれがあります。 個室に比べれば、音に対する配慮が必要になりますので、気になる方は個室スペースを選んで、仕事や作業をするという選択肢もあります。 もう一つのデメリットは、周囲の人の動きが目に入ることです。オープンスペースの場合には、どうしても周囲の人の動きが視界に入るものです。気になる方は、壁や窓に向いている席がある施設や、個室スペースを選ぶという対策方法があります。
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