スマートオフィスとは ?意味、始まりと変遷 、メリット、デメリット

フレスペ

■スマートオフィスの意味

スマートオフィスは、IoT機器、クラウド、デジタルデバイスなどのデジタル技術、高速通信技術、IT(情報技術)、ICT(情報通信技術)、AIなどを活用して、業務の効率化を促進し、快適性や利便性、安全性と省エネが実現した最新の事務所のことを指す言葉です。

スマートフォンなど、様々なスマート◯◯があります。現在はその範囲を拡大してスマート工場、スマート農業、スマートストアなど様々な業界やビジネスへ適用範囲が広がっています。スマート◯◯とは、IT(情報技術)、ICT(情報通信技術)、IoTやAIなどデジタル技術を活用し従来にはない付加価値を提供した総称となり、 オフィスに従来にはない付加価値を、デジタル技術等を活用し実現した、最新の事務所が、スマートオフィスとなります。 スマートオフィスは、オフィス全体がIoT機器やネットワークに繋がることで、様々なデータを可視化することができます。例えば、オフィス稼働状況やフリーアドレスの稼働状況などが分かります。

建物内様々な場所に設置されたセンサーが、社員一人一人の場所、室内の温度や湿度、照度等を計測し、社員の方々の動きや動線まで分かり、そのデータをもとにオフィスの環境が自動制御されたり、そこから得られたデータをもとに業務効率を改善したり、シームレスで快適な作業環境を創出したりすることが可能となります。

また、オフィス内の会議室やフリーデスク、備品などをスマートフォンから予約したり、受付のスマートデバイスから担当の社員を呼び出したり、照明や空調を自動で調整したりできるなど、様々なことをスマートデバイスから行うことができます。 こういった様々なオフィス内の人や、場所や、モノがデジタル化によって、有機的につながることによって、オフィス内での仕事を、途切れや継ぎ目がなく、規則的につながって、(シームレスに)行うことができるようになります。

シームレスに様々なモノ、人、場所が有機的につながるということは、便利であり、あらゆるひとの作業や仕事がスムーズになり、中断することなくできるため、心地よく働け、生産性や質の向上にもつながります。

今では、多くの会社の業務のなかでスマートデバイスや高速通信などを導入し、活用する流れになっています。また、元々の出勤する場所としてのオフィスだけでなく、コワーキングスペースの活用やテレワークの導入など、新たな働き方を取り入れている会社も多くなってきました。

また、オフィス全体をスマート化することで、出勤するための拠点としてのオフィス自体を快適に、便利にするだけでなく、拠点としてのオフィスにいなくても、社内の情報が参照できたり、様々な場所で、仕事ができる環境構築を含め、それらによって、生産性や質、心地よさの向上が、スマートオフィスの目指すものになります。

■スマートオフィスの歴史

従来のオフィスから現在のスマートオフィスへの移行は、次の3つの段階に分けることで説明ができます。

第一段階(1996-2006)

これがすべての始まりで、生産性を高めるために、ノートPC、携帯電話、インターネットの使用が開始し、導入されました。

第二段階(2006-2016)

IT技術が更に推進し、洗練され、スマートフォンや、その他の高速なデジタルデバイスが市場に導入され、アプリ、クラウドコンピューティングなどが発明され、利用されました。

第三段階(2017年から現在まで)

企業は現在、スマートオフィスの概念をよりよく理解しており、自動化されたシステムを統合して、オフィスを超効率的に、運用コストを削減し、従業員にとって適切で心地よいシームレスな作業環境を提供できる様になりました。

■スマートオフィスのメリット

快適な労働環境により、生産性や質の向上が見込める

スマートオフィスでは、IoTやAIといった新しいテクノロジーによって、オフィス環境の自動的な最適化を実現できます。 たとえば、オフィス内のの温度や湿度を自動計測しながら、収集し、そのデータをもとにオフィス環境が管理されます。

言い換えると、人間が快適に感じ、働ける環境を自動で制御し、保ってくれるのです。

従業員が心地よく働ける、快適な労働環境を実現することで、従業員のモチベーションが高まり、労働生産性と質の向上が見込めます。  

労働生産性が高い企業というのは、労働環境の改善へ継続的に取り組んでいる企業が多いとされています。

例えば日本マイクロソフトは、2019年のメディア向け発表会で『ワークライフ・チョイス・チャレンジ』という、週4日勤務の制度を打ち出し、下記の様に発表しました。

・狙いは「短い時間で働き、よく休み、よく学ぶ」こと。

・そのために、8月に5回ある(2019年の場合)金曜日を全社員共通の特別休暇とし、オフィスも閉める。

・週4日勤務である(これが「短い時間で働き」に相当し、それによって生産性の向上を目指す)。

・この間、業績目標や責任範囲は通常の月とまったく変わらない。

・この10年間で1人当たり2カ月分に相当する業務時間を短縮してきた実績があり、その取り組みをさらに促進していく。

非常に生産性の高い、素晴らしい結果だと思いますが、この『ワークライフ・チョイス・チャレンジ』は、「世界150カ国にあるマイクロソフトの拠点の中で、日本マイクロソフトで働く社員の業務時間が一番長い」という指摘を本社から受けていたのが、発端で始まったそうです。

この取り組みを主導したエグゼクティブアドバイザーの小柳津篤氏は、このように発言しています。

「我々は業務の削減と効率化、さらには事業モデルの転換により、過去10年で年間売上高を180%に成長させる一方で、業務時間を1人当たり2カ月分減らしてきました。結果、1人当たりの生産性は202%上がりました。よくやっていると自画自賛していたのですが、グローバルレベルで見ると、まったく不十分であることがわかったのです」

そこから、現状を分析し、就業日数、紙の印刷枚数、電力消費量などを削減対象とし、逆に30分会議実施率、リモート会議実施率、1日あたりの人材交流数を向上対象とした。

そして、実施した結果、過去3期の実績比較で、就業日数は25.4%減、紙の印刷枚数は58.7%減、電力消費量は23.1%減と、それぞれマイナスになった。30分会議実施率は前年8月と比べ46%増、リモート会議実施率は直近4月から6月と比べて21%増、1日あたりの人材交流数は前年8月と比べ10%増と、いずれも向上し、従業員の94%が評価するとなったそうです。

スマートオフィスではフリーアドレスや集中ブース等をつくることで、 従業員各人が心地よく仕事ができるワークプレイスを提供し、それぞれに合った環境で働くことによって生産性を向上させます。

照明、会議室予約等をスマートフォンアプリから操作して最適にしたり、予約ができたり、スムーズに物事を進めることができますし、拠点であるオフィス以外でも機能する、IoTプラットフォームを活用した勤怠管理システムにより、テレワークなど、働き方改革の実現も可能となります。

時間を自由に有効活用できる

生産性の向上にも関係しますが、 スマートオフィスでは、ネット環境があれば、どこにいても仕事ができます。 たとえば、フィールドセールス(営業マン)は対面商談の場合は、相手先とオフィスの移動時間が必要になり、場合によっては、単純な移動であれば、その時間が無駄になる可能性があります。

現在は、オンラインで商談ができるツールもありますし、スマートオフィスにすると、場所にこだわらないで仕事ができるため、移動時間を有効活用し、仕事も可能です。

在宅で仕事をすることも可能なので、家事や育児、介護などでオフィスへの出社ができない従業員に対しても仕事とプライベートの自由度を上げることができます。

ストレスを軽減し、モチベーション向上が期待できる

生産性が向上し、時間を有効活用できることにも関係しますが、 スマートオフィスを実現すると、コワーキングスペースや自宅など様々な場所で仕事に取り組めるため、時間を有効活用できたり、無駄なストレスとなる、朝の通勤ラッシュを無理に経験する必要がなくなります。

単純な移動時間は特に生産性は有りませんが、例えば、片道1時間、往復2時間、月22日勤務だと、月間で通勤に44時間かかります。これを自宅でテレワークが実現できた場合は、 従来より、人生の自由時間が44時間増えることになります。

このようなメリットがあり、ストレスを軽減し、自由時間が増え、従業員の満足度、モチベーションが向上することが期待できます。

固定費の削減が期待できる

スマートオフィスによって得られるメリットに、固定費の削減があります。 スマートオフィスでは、人の行動に応じた設備管理を自動的に行えるようにり、エネルギーの消費効率は良くなり、固定費も削減されます。照明も空調も人の行動に応じて自動制御して常に最適化されるので、従業員にとっては居心地の良いオフィスになり、会社にとってはコスト効率の高いオフィスになります。さらに、予約管理や入退室管理によってリアルタイムな利用状況が把握できるため、利用実態に応じたオフィスの使い方や区割りの変更など、より効率的なオフィス空間や運用を模索することが可能です。

■スマートオフィスのデメリット

セキュリティの問題があり対策が必要

スマートオフィスは、IoTやAIなどの最新テクノロジーを活用して、照明、空調、人の動線や勤怠管理、会議室予約管理など、あらゆるデータがAIやIoT機器を通じて可視化され、それによってワークスペースの業務効率化、快適性や利便性、と省エネなどの固定費の削減が実現できるメリットがありますが、デメリットとしては、スマートオフィスを実現する際に、オフィスがインターネットにつながったままで、あらゆる機器やシステムが制御されるようになることは、不正アクセスやウィルス感染などの脅威に常にさらされていることになるので、セキュリティ上のリスクが増し、その対策が必要になるということです。

特に外部のフリーWi-Fi使用などには、注意が必要で、暗号化されていないフリーWi-Fiでは、通信が盗聴、のぞき見される可能性があります。通信内容が暗号化されていないと利用者が閲覧しているWebサイトのURLや履歴、メールの内容などを、同じフリーWi-Fiに接続している第三者が簡単に取得できますので、PCやデジタルデバイスなどの端末が何らかのコンピュータウイルスやワームに感染されてしまうリスクがあります。

その状態でスマートオフィスにアクセスしてしまうと、ネットワークを介して機密情報漏洩、個人情報流出など重大な事件が起きてしまう可能性があることは否定できません。

この様な事態を避けるためにも、 スマートオフィスではしっかりとした、セキュリティ対策が必要になるとともに、 従業員のセキュリティに対するリテラシーの向上も必要になります。 どこからでも社内の情報にアクセスできることは、不正アクセスのリスクを高めることになります。

特に気をつけておきたいのは「フリーWi-fi」です。カフェやコワーキングスペースで作業をするときには注意しなければなりません。会社でセキュリティを強固にすることはもちろん、社員の意識を高めることも大切になります。

初期導入費用がかかる

スマートオフィスを始めるためには、IoTやAI、クラウドサービスといったシステム、スマートデバイスや高速通信などを導入する必要があります。

例えば、社員一人ひとりにタブレットを支給するだけでも多額の費用がかかります。

また、オフィスがインターネットにつながったままで、あらゆる機器やシステムが制御されることから、セキュリティ上のリスクが増し、それに対する対策も導入費用に含まれます。

 社内のセキュリティ状況によっては、セキュリティ向上のために管理体制を一新する場合などもあります。

また、スマートオフィス実現のために、インターネットの通信環境によっては、現状の通信環境より、速い遅延のない高速通信に変更を必要とする場合もあります。 そして、現在導入しているITシステムとの互換性や、連携可否も重要であり、 現在利用している機器との連携が難しければ、システムの総入れ替えを行う必要もあり得ます。

利点が多い、スマートオフィスを導入する際には、さまざまな多額費用がかかることになりますので、一気にスマートオフィス化することが難しい場合は、優先度が高いものから、段階的に導入を進める方法もあります。その際、必要なのはスマートオフィス化へのしっかりとした計画になります。